
皆さんこんにちは!
T.A.Garage、更新担当の富山です。
前回は、自動車整備の歴史を振り返りました。
今回は、その流れを受けて、現場で日々整備にあたる私たち整備士が守るべき「鉄則」について掘り下げていきます。
整備は単なる技術職ではありません。“人の命”と“社会の流れ”を支える、責任ある仕事。だからこそ、守るべき原則には重みがあります。
整備における最大の使命は、“安全性の確保”。
そのためには以下を徹底する必要があります:
リフト使用時の二重確認
タイヤのトルク締めチェック
燃料・高圧部の絶縁処置
試運転時の異音・異臭の確認
また、自分の安全にも万全を期すべきです。高温部・高電圧部の整備では絶縁手袋・ゴーグル・保護具の着用を怠らず、「慣れ」が事故を生まないように心がけましょう。
例えば、「エンジンがかからない」という症状ひとつでも、原因は:
バッテリーの電圧不足
セルモーターの不良
イグニッション不良
ECU不良
キースイッチの接触不良
と、いくつも考えられます。“とりあえず部品交換”では、根本的な解決にはなりません。
“なぜ壊れたのか?”
“なぜ今起こったのか?”
“今後も再発しないか?”
この3つの視点から原因を深掘りするのが、プロ整備士の使命です。
整備現場では、経験豊富な整備士ほど基本を疎かにしがち。
だからこそ「ルール通りにやる」「手順を守る」ことが重要です。
オイル交換後の漏れ確認
ブレーキエア抜き後の再チェック
ランプ点検、ワイパー確認
“当たり前のことを、当たり前にやる”。それが事故やトラブルを防ぎます。
車は日々進化しています。AI制御、クラウド連携、センサーフュージョン…
これからは「情報を理解し、技術に適応する力」が問われる時代です。
定期的なメーカー講習の受講
診断機のアップデート確認
新型車の取扱説明書の熟読
国交省の技術通達の把握
整備士は「機械に強いだけ」では通用しない、まさに総合技術職です。
最後に大切なのが「コミュニケーション」。
どんなに腕のいい整備士でも、お客様との信頼関係が築けなければ、仕事の価値は半減してしまいます。
車の状態を正確にわかりやすく伝える
修理方法や見積もりの意図を説明する
安心して任せてもらえるよう、笑顔と丁寧な言葉を心がける
整備士は“車と人の橋渡し役”。技術も接客も、両輪で成り立つ時代です。
工具を握る手には、お客様の命がかかっています。
整備士の鉄則とは、技術に対する誠実さと、人に対する思いやりを持ち続けることです。時代がどれだけ変わっても、それは変わりません。
これからも、整備の現場で汗を流すすべての仲間たちと共に、“信頼されるプロ”であり続けましょう!
次回もお楽しみに!
皆さんこんにちは!
T.A.Garage、更新担当の富山です。
今回のテーマは「自動車整備の歴史」。
普段何気なく乗っている車、その裏側には130年以上にも及ぶ技術の積み重ねと、整備士たちの不断の努力があります。今回は、そんな“縁の下の力持ち”である整備の世界の、過去から現代までをじっくりと振り返ってみましょう。
整備とは、「本来あるべき性能を維持すること」。
つまり、壊れたから直すだけでなく、壊れないように予防するのも整備の本質です。これは実は、今も昔も変わらない大原則。時代とともにその方法やツールは変わりましたが、“安全・快適な走行を支える”という使命は不変です。
自動車の整備は、自動車そのものの誕生と共に始まりました。
1886年、ドイツのカール・ベンツが発明したガソリン自動車。この頃の車は、現代のような大量生産品ではなく、職人による一点モノ。整備も製作も一体化していました。
当時の“整備士”は、まさに機械技術者であり発明家。試行錯誤の連続であり、油まみれになりながら機構の調整を重ねていた時代です。
1908年、アメリカのフォード社が「T型フォード」の量産を開始。
ベルトコンベア方式の導入で、車は一気に庶民の乗り物となりました。すると、車が壊れたときに対応する「整備専門職」が必要とされ始めます。
この頃から、「整備士」は製造とは別の職種として成立していきます。欧米では職業訓練校が整備士養成を始め、日本でも軍用トラックやバスの普及とともに整備技術が高まっていきました。
第二次世界大戦後の日本では、交通インフラの復旧とともに自動車の需要が急増。トヨタ、日産、三菱などが次々と乗用車を市場投入し、モータリゼーションが進みました。
1950年代には整備工場が各地に設立され、「民間車検工場制度」も誕生。さらに1960年、国家資格「自動車整備士」が法制化され、整備は“専門職”として社会的信用を得るようになります。
オイルショックや排気ガス問題により、整備にも新たな技術対応が求められるようになりました。特にキャブレター調整や排ガス浄化装置の整備は、国家整備士試験でも重点項目となりました。
この時期は「メカチューン」「レース整備士」「街のクルマ屋さん」が花形だった時代。
エンジンの音、振動、においで異常を察知する熟練職人が各地にいました。
バブル期を超えると、車の制御は完全に電子化の方向へ。ECU(電子制御ユニット)による燃料噴射制御、AT制御、ABS、さらにはエアバッグなど、安全・快適機能が次々と車に組み込まれていきます。
整備士は「工具を持つ人」から、「データを読む人」へ。スキャンツール、診断ソフト、パソコン操作など、新たなスキルが必須となりました。
現在では、EV(電気自動車)やFCV(水素自動車)、自動運転技術といった革新技術が次々に登場。
整備士には高電圧作業の知識やソフトウェアアップデートの技術、さらには車両データのクラウド管理といった“IT整備士”としての資質が求められます。
整備の進化は、そのまま車社会の進化です。道具やシステムは変わっても、「人の命を預かる」という責任は変わりません。
次回は、そんな整備士が守るべき“現代の鉄則”について、より実践的に深掘りしていきましょう。
次回もお楽しみに!